意思決定会計とは-その役割と重要性-

「売上がのびてきたし、新しい店舗をオープンしようかな」
「この事業はコストが高いな。コストカットをするにはどうしたら良いだろう」

企業では利益を生み出すために日々さまざまな選択に迫られます。

売り上げを増やすために価格を上げる、コストカットのために人材を減らす等々、より良い経営のためにそういった決定をすることがあるでしょう。

しかし、「なんとなく」で意思決定を行うわけにはいきません。
そこに明確な根拠が無ければ、誤った意思決定をしてしまう恐れがあります。

そういったリスクを回避するため、企業はデータを集計・分析し、数値による根拠を明確にする必要があります。それが「意思決定会計」と呼ばれるものです。

そもそも意思決定会計とは?

意思決定会計とは、自社の経営成績や財政状態を集計・分析し、組織内部の管理や新たな取り組みをおこなう際に活用する、会計上の手法を指します。

ここでいう新たな取り組みとは、設備投資や合併など、企業にとって大きな影響を与えるものから、人材配置や業務の進め方など、日常レベルの決定事項に至るまでさまざまです。

なお、会計とは大きく分けて「財務会計」と「管理会計」の2種類に分けられますが、意思決定会計は「管理会計」に分類されるものとなります。

意思決定会計に厳密なルールは無い?

先ほど、意思決定会計は管理会計に分類されるものだと説明しました。

財務会計は「貸借対照表」などの書類を作成し、投資家など外部に向けて公表することを目的としています。
公的な書類となるため、「企業会計原則」などのルールに従って作成しなければなりません。

一方、管理会計は特定の書類を作成することを目的としたものではありません。

あくまで自社で活用することを目的としておこなわれるため、法律で定められたルールは存在せず、基本的には外部に公表する義務もありません。

意思決定会計の主な手法①損益分岐点分析

意思決定会計に法定のルールは存在しないと前段で説明しましたが、よく使われる手法というものはいくつか存在します。

そのうちの一つが「損益分岐点分析」です。
これはCVP分析とも呼ばれ、事業などのプロジェクトを「Cost(原価)」「Volume(量)」「Profit(利益)」に分けて分析するものです。

例えば、「毎月100万円のコストが発生する工場」で「1個販売すると1万円の利益が発生する商品」を製造しているとした場合、最低100個販売しないとその事業は赤字になってしまいますよね?

このように、まずは収支がゼロになる点(損益分岐点)を算出して、利益を生み出すにはどのくらいの量を製造すれば良いか、はたまた商品の値段を上げた方が良いか…、等々、細かな関係性を分析していく手法が「損益分岐点分析」です。

意思決定会計の主な手法②差額原価収益分析

先ほどの「損益分岐点分析」は一つの事業について掘り下げて分析を行う手法でしたが、複数の事業を比較して分析する「差額原価収益分析」という手法もあります。

これは複数の事業案が存在する場合に、どちらを採用した方がより利益を生み出せるかを比較する手法です。
基本的にはそれぞれの事業案から生み出される利益を比較していくことになります。

例えば
「A案を採用すると収益が100、費用が50発生する」
「B案を採用すると収益が150、費用が60発生する」
という二つの案があった場合、A案は利益が100-50=50、B案は利益が150-60=90となりますので、B案を採用すべきとなります。

しかし、もし仮に
「B案を採用するとC工場の稼働を停止させなければならない。C工場は70利益を生み出している」
という条件が加わった場合はどうでしょうか。

B案だけで考えると利益は90となりますが、C工場の利益70が失われることとなるため、全体では差し引き20の利益しか生み出さないこととなります。

結果、A案の利益50を下回ることとなるため、この場合はA案を採用すべきとなります。

このように、ある案を選択した際に、他の選択肢から得られたであろう利益を「機会費用」といいます。
「差額原価収益分析」を行う際には、機会費用も考慮する必要があります。

意思決定会計には「時間価値」を考慮する必要がある

そのほか、どの手法にも共通する考え方として「時間価値」という概念があります。

これは
「今もらえる100万円」と「1年後にもらえる100万円」は同じ価値ではないというような考え方です。

もしあなたが上記のどちらかを選択するとした場合、どちらも同じ100万円である以上、今すぐもらえる方が得だと感じますよね?

意思決定会計のうえでも考え方は同じです。

例えば
「A案では1年目で100万円の利益を生み出す」
「B案では5年間で20万円ずつ、合計100万円の利益を生み出す」
という二つの案があった場合、一見二つの案は同じ100万円の利益を生み出す事業であるように思えます。

しかし、A案の方がより早く利益を生み出すため、その後新たな事業を開始するなど運用の選択肢が存在し、結果的に全体で得られる利益も高くなる可能性があります。

結果、A案の方がより価値が高いという結論となります。

このように、時間により価値に差が生じるという点も考慮する必要があります。

【まとめ】意思決定会計の重要性

意思決定会計は企業にとって義務ではありません。
実施しなかったからといって、法律で罰せられることも、ペナルティを受けることもありません。

しかし、冒頭でも述べたように、企業は日々意思決定に迫られます。
常に最も良い選択を行うようにするためには、日々の経営数値を細かく集計し、データとして分析することが不可欠となります。

企業が正しく成長するためには、意思決定会計の重要性は非常に高いといえるでしょう。